あなたのデスク、探し物に何分使っていますか?
「あの請求書、どこにやったっけ?」 「去年の決算データの最終版、どれだっけ?」
経理業務の中で、実はかなりの時間を占めているのが「モノやデータを探す時間」です。
製造業の現場、特にトヨタ自動車などの工場では、この「探す時間」を徹底的に排除しています。なぜなら、探している時間は何も価値を生み出さない「ムダ」だからです。
これは、オフィスのデスクでも全く同じことが言えます。 今回は、工場の生産管理で使われる「5S(ゴエス)」という考え方を経理業務に応用し、科学的にムダを省く技術をご紹介します。
精神論ではない!科学としての「5S」とは
「5S」と聞くと、「掃除をしっかりしよう」「整理整頓を心がけよう」といった精神論やマナーの話だと思われがちです。
しかし、経営学(特にインダストリアル・エンジニアリング=IE)の世界では、5Sは「業務効率と安全性を高めるための科学的な管理手法」と定義されています。
5Sとは、以下の5つの言葉の頭文字です。
- 整理 (Seiri)
- 整頓 (Seiton)
- 清掃 (Seiso)
- 清潔 (Seiketsu)
- 躾 (Shitsuke)
この中で、経理DXにおいて特に重要なのが最初の2つ、「整理」と「整頓」です。この2つの違い、明確に答えられますか?
ステップ1:経理における「整理(Seiri)」
5Sにおける「整理」の定義は、「必要なものと不要なものを分け、不要なものを捨てること」です。 きれいに並べることではありません。「捨てる」ことが整理です。
【経理の現場でやること】
- 物理: 3年以上前の不要な書類、インクの出ないペン、使わない電卓を廃棄する。
- デジタル: デスクトップに散らばった「とりあえず保存」したファイル、重複したデータ、「コピー ~ 〇〇.xlsx」といったファイルを削除する。
まずは「要らないものを捨てる」。これがスタートラインです。
ステップ2:経理における「整頓(Seiton)」
「整頓」の定義は、「必要なものを、いつでも誰でもすぐに取り出せるように配置すること」です。 ここで初めて「並べる」「ルールを決める」という作業が入ります。
【経理の現場でやること】
- 30秒ルールの徹底: どんなファイルでも30秒以内に取り出せなければ、それは整頓されていません。
- 命名規則の統一: ファイル名は「日付_取引先_内容」にする(例:20251130_A商事_請求書.pdf)。
- フォルダ階層の標準化: 誰が見てもどこに何があるか分かるよう、フォルダ構造を全社で統一する。
工場で工具の置き場所が決まっているように、経理データにも「住所」を決めてあげるのです。
なぜ5Sが「利益」に繋がるのか?
「たかが片付けでしょ?」と思われるかもしれません。 しかし、もし社員が1日平均20分「探し物」をしていたら、月間で約7時間、年間で約80時間以上をドブに捨てていることになります。
時給2,000円だとしたら、社員一人あたり年間16万円の損失です。 5Sを徹底してこの時間をゼロにすれば、それはそのまま会社の「利益」になります。
つまり、5S(整理・整頓)とは、掃除ではなく「利益を生み出すための経営活動」なのです。
まとめ:まずはデスクトップの「整理」から
経理DXの第一歩は、高価なシステムを入れることではありません。 まずは目の前の不要なファイルを「捨てる(整理)」、そして必要なファイルに正しい名前をつけて「置く(整頓)」ことから始まります。
「ウチの会社、データが散らかってるな…」と感じた方は、ぜひ一度、トヨタ式の「5S」の視点でオフィスを見渡してみてください。
「何から整理していいか分からない」「自社のデータ管理ルールを作ってほしい」という方は、ぜひ『経理の健康診断』をご利用ください。第三者の視点で、ムダのない業務フローをご提案します。



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