AI時代の最強スキル「業務設計能力」とは?経理作業を“点”ではなく“線”でデザインする方法

経理DXのヒント

「AI-OCRを導入して、請求書の読み取りは自動化した」 「クラウド会計ソフトで、銀行連携もしている」

…素晴らしい取り組みです。しかし、こんな状態に陥っていませんか?

「AI-OCRが読み取ったデータを、結局Excelにコピペして、それを会計ソフトのCSV取り込み形式に手作業で加工して、やっとアップロードしている…」

これは、まさに私が以前のブログで警鐘を鳴らした「ツールの沼」や「AIの罠」にハマっている典型例です。なぜこんなことが起きるのでしょうか。

それは、経理DXを「ツールの導入」というでしか捉えておらず、業務全体の流れ(フロー)という線で捉える視点、すなわち「業務設計能力」が欠けているからです。

AI時代において、この「業務設計能力」こそが、経理担当者の価値を最大化する最強のスキルとなります。


「作業者」と「設計者」、あなたはどちらですか?

まず、2つのマインドセットの違いを見てみましょう。

  • 作業者(オペレーター)のマインドセット:
    • 「どうすれば、この入力作業をもっと速く正確にできるだろうか?」
    • (例:Excelのショートカットキーを覚える、タイピング速度を上げる)
  • 設計者(アーキテクト)のマインドセット:
    • 「どうすれば、この入力作業そのものを、二度とやらなくて済むようにできるだろうか?」
    • (例:AI-OCRと会計ソフトをAPI連携させ、データが自動で流れる仕組みを作る)

AIは、間違いなく「作業者」の仕事を奪っていきます。しかし、「設計者」の仕事は、AIには決してできません。AIやツールを「どう配置し、どう連携させ、どういうルールで動かすか」という仕組み(フロー)をデザインするのは、人間の仕事なのです。


経理業務の「設計者」になるための3ステップ

では、どうすれば「設計者」になれるのでしょうか? 難しく考える必要はありません。以下の3ステップで、あなたの会社の経理業務をデザインし直してみましょう。

ステップ1:現状の業務フローを「すべて書き出す」(可視化)

まず、現状の非効率さを直視することから始めます。一つの業務(例えば「請求書の処理」)を選び、スタートからゴールまで、全ての「手作業」と「判断」を書き出します。

【悪い例:請求書処理の現状】

  1. 請求書が紙やPDFで届く
  2. 内容を目視でチェック
  3. 会計ソフトを開き、仕訳を手入力する
  4. 支払い予定日をExcelの管理表に入力する
  5. 振込データを作成するために、ネットバンキングに同じ情報を手入力する
  6. 支払い後、会計ソフトで消込作業を手入力する
  7. 紙の請求書をファイリングする

この時点で、「手入力が3回も発生している」「Excelと会計ソフト、ネットバンクでデータが分断している」といった問題点が浮かび上がってきます。

ステップ2:ボトルネックと「孤島」を特定する

次に、書き出したフローの中で、最も時間がかかっている場所(ボトルネック)や、データが孤立している場所(孤島)を見つけ出します。

上記の例では、明らかに「手入力(ステップ3, 4, 5, 6)」がボトルネックであり、「Excel管理表(ステップ4)」が会計ソフトと連携していない「孤島」です。

ステップ3:「あるべき姿」を設計する(自動連携)

最後に、ステップ2で見つけたボトルネックと孤島を、テクノロジーでどう解消できるかを考え、「あるべき姿(To-Be)」を描きます。

【良い例:請求書処理のあるべき姿】

  1. 請求書が届いたら、全てAI-OCR(会計ソフトと連携済みのもの)でスキャンする
  2. AIが「仕訳データ」と「支払先・金額・支払予定日」を自動で読み取り、会計ソフトに自動でドラフト(下書き)を作成する
  3. 人間は、そのドラフトを目視でチェックし、「承認」ボタンを押すだけ
  4. 承認と同時に、「仕訳」と「消込」が完了し、「振込データ」も自動で作成される
  5. 請求書データはクラウド上に自動で保存される(ファイリング不要)

これが「業務設計」です。 「手入力」という作業は消滅し、経理担当者の仕事は「AIが作成したドラフトの承認者・管理者」へと変わりました。


まとめ:AIを使いこなすとは、「作業」をさせることではない

AIを使いこなすとは、AIにタイピングをさせることではありません。AIが自動で動かざるを得ないような、「データが流れるパイプライン」を設計してあげることなのです。

あなたの会社には、まだ手作業でデータを運んでいる「孤島」はありませんか? まずは一つの小さな業務フローから、あなた自身が「設計者」となって、自動化の「橋」を架けるところから始めてみてください。

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