「経理は利益を生まないコストセンターだ」 「誰がやっても同じ事務作業だろう?」
もし社長がそう思っているとしたら、それは競合他社に勝つための「最強の武器」をドブに捨てているのと同じかもしれません。
私は現在、中小企業診断士の勉強を通して経営戦略を学んでいますが、そこで「VRIO(ブリオ)分析」というフレームワークに出会いました。 これを使って自社の経理部門を分析すると、「強い経理」こそが、ライバル企業が最も真似できない競争優位の源泉になることが理論的に証明できるのです。
今回は、単なる事務屋だと思われがちなバックオフィスを、経営学の視点から再定義してみます。
1. 会社の武器を評価する「VRIO分析」とは?
VRIO分析とは、その会社が持っている経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)が、どれくらい競争力があるかを4つの質問でチェックするツールです。
- Value(経済価値):その資源はお金になるか?
- Rarity(希少性):それは珍しいか?
- Imitability(模倣困難性):それは真似しにくいか?
- Organization(組織):それを活かす組織になっているか?
この4つが全て「YES」になった時、その会社は「持続的な競争優位(ずっと勝ち続けられる力)」を手に入れます。
2. あなたの会社の経理はどのレベル?
では、このVRIOを経理部門に当てはめてみましょう。
レベル1:普通の経理(Vのみ)
- 状態: 請求書を出し、決算書を作り、税金を払う。
- 判定: 「競争均衡」
- 解説: 会社として当たり前の機能(Value)はありますが、どの会社もやっているので珍しくありません(Not Rare)。これだけでは差別化になりません。
レベル2:DX化された高速経理(V+R)
- 状態: クラウド会計やAIを活用し、月次決算が翌月3日で終わる。リアルタイムで数字が見える。
- 判定: 「一時的な競争優位」
- 解説: 中小企業でこれができている会社はまだ少ないので、希少性(Rarity)があります。判断スピードが上がり、他社より有利になります。 しかし、これだけではまだ弱いです。なぜなら、最新ツールは「お金を出せば他社も導入できる(真似できる)」からです。
レベル3:経営判断と直結した最強の経理(V+R+I+O)
- 状態: 経理が出したデータを全社員が理解し、現場が自律的にコスト削減や値決めを行っている。
- 判定: 「持続的な競争優位」
- 解説: ここがゴールです。 「ツール(モノ)」だけでなく、それを使いこなす「業務フロー」や「数字への意識(文化)」まで作り込まれている状態です。 この「組織文化」や「仕組み」は、他社が簡単には真似できません(Imitability:模倣困難)。
3. 商品は真似できても、組織は真似できない
競合他社は、あなたの会社の「商品」や「価格」や「Webサイト」はすぐに真似できます。 しかし、「裏側にあるバックオフィスの効率」や「意思決定のスピード」は、外からは見えないため、絶対にコピーできません。
- 他社が請求書探しに追われている間に、自社はAIで分析している。
- 他社がどんぶり勘定で安売りしている間に、自社は原価管理で利益を出している。
この「見えない差」の積み重ねが、5年後、10年後に圧倒的な差となって現れます。
まとめ:経理への投資は「守り」ではなく「攻め」
VRIO分析が教えてくれるのは、「他社が真似しにくいもの(Imitability)こそが最強の武器」という事実です。
高価なシステムを入れるだけでは不十分です。 それを使いこなし、経営判断に活かす「組織(Organization)」を作り上げること。
「経理なんて誰でもいい」をやめて、「ウチの経理は他社には真似できない」と言えるレベルまで磨き上げてみませんか? それが、最も賢い経営戦略です。



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