「あと少しで契約できそうなんだ。今回だけ10%値引きしていいか?」
営業担当や、あるいは社長ご自身が、売上欲しさにこんな判断をしていませんか?
「まあ、10%くらいなら、販売数を10%増やしてカバーすればいいだろう」
もしそう考えているなら、今すぐ電卓を叩いてください。
その勘は、会社を倒産させる致命的なミスかもしれません。
今日は、中小企業診断士の財務会計で学ぶ「CVP分析(損益分岐点分析)」を使って、安易な値引きがいかに恐ろしい結果を招くかを証明します。
1. そもそも「CVP分析」とは?
CVP分析とは、Cost(費用)、Volume(販売量)、Profit(利益)の関係を分析する手法です。
ここで最も重要なのが、費用を「変動費」と「固定費」に分けることです。
- 変動費: 売上に比例して増える費用(仕入原価、外注費など)
- 固定費: 売上がゼロでもかかる費用(家賃、人件費、リース料など)
利益は、「売上から変動費を引いた残り(限界利益)」から、さらに「固定費」を引いて残ったものです。
この構造が分かると、値引きの怖さが見えてきます。
2. 恐怖のシミュレーション:10%の値引きを取り戻すには?
具体的な数字で見てみましょう。
ある商品を売っているとします。
- 定価: 100円
- 仕入(変動費): 70円
- 利益(粗利): 30円(利益率30%)
この状態で、「10%値引き(90円)」で売ることにしました。
仕入値(70円)は変わりませんから、1個あたりの利益はこうなります。
- 90円(売価) - 70円(仕入) = 20円(利益)
なんと、利益は30円から20円へ、「33%」も減ってしまいました。
売価はたった10%しか下げていないのに、手残りの利益は3分の1も消し飛んだのです。
では、元の利益額を確保するには、販売数をどれだけ増やさなければならないでしょうか?
答えは「1.5倍(50%増)」です。
「たった1割の値下げを取り戻すために、1.5倍の数を売らなければならない」
これが、CVP分析が教える残酷な真実です。現場の負担は激増し、疲弊し、やがて組織は崩壊します。
3. 「値下げ」ではなく「損益分岐点」を下げる
安易な値下げは、修羅への道です。
では、利益を確保するために経営者がすべきことは何でしょうか?
それは、「損益分岐点を下げること(=固定費の削減)」です。
ここで、私たちバックオフィスの出番です。
DXや業務効率化によって、人件費としての残業代や、無駄なシステム利用料、ペーパーレスによる消耗品費などの「固定費」を削ります。
固定費が下がれば、無理に売上を増やさなくても利益が出ます。
売上が下がっても赤字になりにくい、「不況に強い筋肉質な会社」に生まれ変わるのです。
まとめ:値決めは経営そのもの
「10%くらいなら…」という感覚がいかに危険か、お分かりいただけたでしょうか。
値引きは、麻薬のようなものです。一度使うと、一時的に売上は立ちますが、体(利益体質)を確実に蝕みます。
営業マンが値引きを提案してきたら、
「その値引き分をカバーするには、何個余計に売らなきゃいけないか計算したか?」
と聞いてみてください。
数字に基づいた冷徹な判断こそが、会社と社員を守ります。


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